1. うつ病とは?
日本のうつ病率は世界的に見て欧米と比べると低いという統計結果がありますが、自殺率は高い傾向にあります。これはおそらく、日本ではまだうつ病を医療機関で治療してもらうということや、うつ病治療のためにカウンセリングをうけるなどの概念が社会的にそれほど普及されていないからだと思われます。欧米などでは積極的に医療機関や精神療法などのカウンセリングを受けることが社会的に奨励されていますが、日本ではまだ抵抗を感じる人も多い現状があります。
人々は人生においてさまざまなきっかけやタイミングの時でうつ病を経験します。うつ病は日々の仕事に支障をきたし、時間を失いやすくし、生産性を低下させることがあります。うつ病はまた、友人や恋人との関係性に影響を与えることがあり、身体的な疾患の症状として表われることもあります。
うつ病は10代、20代、30代で始まることがよくありますが、どの年齢でも起こる可能性があります。男性よりも女性の方がより多くうつ病と診断されています。 いくつかの研究では、女性のおよそ3分の1ほどが生涯で大きなうつ病の経験をすること報告されています。これは部分的には女性が治療を受ける可能性が高いためでもあります。男性は、うつ病の発症率は少ないのですが、自殺率は男性の方が高くなっています。日本では男性の自殺率は女性の2.5倍、米国では男は女の4.2倍,英国は3.6倍となっています。男性は自分自身の感情を感じて助けを求めることができない傾向があるために、一人で抱えてしまって自分自身を死に追いやってしまうからなのではないかと予想されます。
うつ病のために引き起こされる可能性のある症状には、以下のような症状が挙げられます。
- 関節炎
- 喘息
- 循環器疾患
- 癌
- 糖尿病
- 肥満
私たちは皆、時々悲しいと感じることはあり、悲しいと感じる悲惨な出来事は誰の人生でも起こりえます。しかし、一貫して常に惨めで絶望的な気持ちを感じているとしたら、そのことは普通ではありません。大切なことは、自分が何を感じているのかに敏感になって気づき、うつの状態が2週間以上持続しているようであれば、何かしらの助けを求めることです。
うつ病は深刻な病状として扱われるべき病気なのです。
未治療のまま放置すると、うつ病は数ヶ月または数年間続くことがあり、時間の経過とともに悪化する可能性があります。しかし、治療を積極的に行う人は、数週間で症状の改善を見ることができることもあります。
2. うつ病の種類
1)大うつ病性障害
大うつ病性障害は最も重度のうつ病です。
悲しみ、絶望、自分に価値を感じることができないというような気持ちが持続し、一人でには気分がよくならないという特徴があります。
医学的にうつ病と診断されるためには、2週間にわたって以下の症状のうちの5つ以上を経験しなければなりません。
- ほとんどの日に落ち込んだ気分を感じる
- 日々に行なっている活動のほとんどに興味を失う
- 大幅な体重の減少または増加
- 寝すぎ、または眠ることができない
- 遅い思考や動き
- ほとんどの日に疲労やエネルギーが低いと感じる
- 自分を無価値だと感じたり、罪悪感を感じる
- 集中力の欠如
- 決断力がなくなる
- 死や自殺を繰り返し考える
大うつ病性障害にはいくつかの種類があります。
- 非定型うつ病
- 妊娠中または産後直後に発症するうつ病
- 季節のパターンにより発症するうつ病
- 精神病性うつ病
- 緊張性うつ病
2)持続性抑うつ障害
持続性うつ病障害(PDD)は、以前は気分変調と呼ばれていました。症状は軽度ですが慢性のうつ病の症状です。症状はしばしば少なくとも2年間ほど続くとされています。 持続性うつ病障害は長期間続くので、臨床的うつ病よりも人々の人生に影響を与える傾向があります。
持続性うつ病障害の症状には以下のようなものがあります。
- 通常の日常活動に関心を失う
- 絶望的に感じる
- 生産性に欠ける
- 自尊心が低い
持続性うつ病障害を持つ人は深刻に考えすぎる傾向があり、何かを楽しむことができません。
3. うつ病の原因
子供の頃に受けたトラウマはうつ病の原因となることがあります。
子供の頃は精神と身体の発達が最も盛んな時期であるために、発育過程で身体が子供の頃に受けた恐怖やストレスの多い状況に自動的に反応するようなってしまうからです。
一部の人々は遺伝的にうつ病を発症することがあります。うつ病や別の気分障害を有する家族がいる場合は、その症状を発症する可能性が高くなります。
他の一般的な原因には次のものがあります。
- 脳構造
脳の前頭葉がそれほど活発でない場合、うつ病のリスクがより高くなります。 - 慢性疾患
- 不眠症
- 慢性な痛みを感じていること
- 注意欠陥多動性障害などの医学的状態
- 薬物やアルコール中毒の状態
薬物乱用問題を抱える人々の約30%はうつ病を経験しているとされています。
多くの人々は、うつ病の原因がはっきりとわからないこともあります。
これらの原因に加えて、うつ病の他の危険因子には、以下のようなことがあります。
- 自尊心が低い
- 自己批判的である
- 精神病を発症したことがある
- 服用している薬の影響
- 愛する人と別れたり、死別すること
- 経済的問題
- 離婚
- ストレスの多い出来事
4. うつ病の診断
うつ病は他の健康問題と関連している可能性があるため、医師は身体検査を行い、血液検査を行うこともあります。うつ病は時に甲状腺の問題やビタミンD欠乏症で引き起こされることがあります。
うつ病の症状を無視せずに、気分が改善されない時、または気分が悪化する場合は、医師に相談してください。
うつ病は合併症のリスクを伴う深刻な精神病です。
うつ病は本人だけでなく、愛する人や家族にも影響します。
未治療のまま放置した場合、発症するおそれのある合併症には以下のような症状があります。
- 体重の増加または減少
- 身体の痛み
- 薬物乱用の問題
- パニック発作
- 人間関係の問題
- 社会的孤立
- 自殺を考えてしまう
- 自虐行為を行う
5. うつ病の治療
・うつ病治療薬を服用する
医師は、抗うつ薬、抗不安薬、または抗精神病薬を処方することがあります。
・心理療法
セラピストと話すことは、否定的な感情に対処するスキルを学ぶのを助けることができます。グループのセラピーセッションをうけると同じような状況の人と交友することもできるために、良い効果をもたらすかもしれません。
・光線療法
光を浴びる療法は、気分をよくさせるので、うつ病の症状を改善するのに役立ちます。この治療法は、季節性情動障害(現在、季節的パターンを伴う大うつ病性障害と呼ばれている)において一般に使用されています。
・代替療法
鍼灸や瞑想、ヨガについて医師に相談してください。
ハーブサプリメントとしては、セントジョンズワート、SAMe、オメガ3(魚油)などがうつ病の治療にも使用されています。
サプリメントを服用する前に医師に相談して、処方薬とサプリメントを組み合わせてください。これを行うと、合併症や副作用を防ぐことに役立ちます。一部のサプリメントは、うつ病を悪化させたり、薬の有効性を低下させたりすることがあります。
・運動
週3〜5日、30分間の運動を行います。
運動は体調を改善するホルモンであるエンドルフィンの体内生産を増加させることができます。
・お酒と薬物を避ける
お酒や薬物を使用すると、少し気分が良くなるかもしれません。しかし、長期的には、これらの物質はうつ病や不安症状を悪化させる可能性があります。
・はっきりと「ノー」と言う(断る)
仕事や個人的な生活の境界を設定することで、気分が良くなることを助けます。
・自己管理
自己管理を行うことでうつ病の症状を改善することもできます。これには、十分な睡眠を取ること、健康な食事を食べること、否定的な人を避けること、楽しい活動に参加することが含まれます。
6. まとめ
うつ病の症状をコントロールするには、治療薬と精神療法の適切な組み合わせを見つけることが必要です。 1つの治療がうまくいかない場合は、別の治療でより良い結果が得られるかもしれません。