1. 早漏とは?
早漏ではないかと心配している男性は世界的には2割〜3割ほどとなっており、日本でおよそ3割が早漏の症状で悩んでいるとされています。
医学的な早漏ではなくても、パートナーの女性を満足させる前に射精してしまうことで悩んでいる男性はたくさんいます。パートナーの女性を満足させるためにはそれぞれ好みの挿入時間が異なるので、一定の基準はありませんが、射精のタイミングをコントロールすることができる能力があるのかが基準となるかもしれません。
早漏は男性の性生活の質に悪影響を及ぼし得る性的機能不全の一形態です。ED(勃起不全)には生殖に関する合併症がときどきあることがありますが、早漏(PE)は男性とそのパートナーの両方にとっての性的満足に悪影響を及ぼします。近年、早漏は男性の性機能不全の認識と理解が改善され、それに起因する問題をよりよく理解することができるようになりました。
早漏(PE)は、性機能不全の身体的な症状という他に、苦痛、恥ずかしさ、不安、うつ病などの二次的症状につながる可能性があります。このような精神的苦痛から、パートナーとの関係性に良くない影響を及ぼしたり、性行為自体が苦痛になり異性と関係性を持つことを避けるようになったり、性行為を避けるようになったりすることもあります。
2. 早漏の症状
- 射精が常にまたはほぼ常に女性の膣に挿入する前、または挿入してから1分以内に起こってしまう
- 毎回、またはほぼ毎回、射精を遅らせることができない
- 早漏により、苦痛や欲求不満や性的な親密さの回避など、否定的な個人的な結果が生じている
二次的症状には次のようなことが挙げられます。
- パートナーとの関係性への自信の低下
- パートナーとの関係性において困難を経験すること
- 精神的苦痛
- 不安
- 恥ずかしさ
- うつ病
早漏の男性は心理的苦痛を経験することがよくありますが、152人の男性とそのパートナーを対象にした調査結果では、パートナーの女性は早漏だと気にしている男性よりもそのことを心配していることが少ない傾向があることを示しました。
3. 早漏の原因
1)心理的要因
早漏(PE)のほとんどの症例は、心理的要因のために引き起こされるとされています。
- 性的な経験が少ないこと
- 身体へのイメージに関する問題
- 新しいパートナーに変わった時の心理的変化
- 過度の興奮または過度の刺激
- パートナーとの関係性からのストレス
- 不安
- 罪悪感
- 自分が相手に対して不十分だという気持ち
- うつ病
より希少で永続的な形態 – 終生早漏または生来型早漏の大部分の症例はまた、心理的問題によって引き起こされると考えられています。
このような状態は、しばしば以下のような子供の頃のトラウマにまでさかのぼることができます:
- 厳しい性的指導と育成環境
- セックスのトラウマをともなう経験
- 十代のころにオナニー(マスターベーション)をしていることを親から見つかることを避けるために速やかに射精することを学ぶこと
このような心理的な要因は、射精の機能をつかさどる自律神経が乱れてしまう原因となるために、射精のタイミングを思うようにコントロールすることができなくなってしまいます。
自律神経は眠りをコントロールする神経系でもあります。
眠りたい時になかなか眠りにつけなかったり、寝てはいけない時に眠くなってしまうのは、自律神経が人の意思からの伝達のとおりに動くのではなく、人が感じている状態により自動的に交感神経と副交感神経が入れ替わることで人の体に伝達をもたらすからです。
射精のタイミングをコントロールしようとして緊張したりストレスを感じると、より早漏になってしまうのはこのためです。射精のタイミングを遅らせるためにはリラックスして性行為を行うことが必要になります。
2)器質性の原因
よりまれなケースですが、器質性の要因があることがあります。
早漏の器質的原因は次のとおりです。
- 糖尿病
- 多発性硬化症
- 前立腺疾患
- 甲状腺の問題
- 違法薬物の使用
- 過度のアルコール摂取
器質性早漏は、根底にある症状が治療されると早漏の症状も改善されることがあります。
・衰弱性早漏
早漏は性的経験の少ない若年層の早漏が多いと思われがちですが、男性が加齢するに従って発症する衰弱性早漏もよくある症状です。
男性が年齢を重ねると、徐々に射精をコントロールすることができる射精管閉鎖筋が弱ってしまうので、精液が本人が意図しているよりも先に漏れ出てしまう衰弱性早漏になりやすくなります。
4. 早漏の治療法
1)カウンセリングやセラピーを受ける
新しいパートナーとの性的関係が始まった時に早漏の問題が発生した場合、その関係が続くにつれて困難が解決されることがよくあります。
しかし、問題がより持続的である場合は、医師または性関係を専門とするセラピスト、または「カップルの治療」を行う専門家からカウンセリングやセックス・セラピーを受けてもよいでしょう。
2)早漏治療薬を服用する
日本やアメリカでは早漏の治療薬は公式には認可されていませんが、ヨーロッパと中心として世界60カ国で認可されているダポキセチン(Dapoxetine)と呼ばれるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)というクラスに属する抗うつ薬が射精のタイミングを遅らせるために使用されています。早漏は、脳内のセロトニンという神経伝達物質のレベルを上げることで改善させることができることがわかり、セロトニンのレベルを上げることができるSSRIクラスの抗うつ剤が早漏を治療するために使われています。
セロトニンは私たちの精神状態を安定させ、不安や恐れなどのネガティブな感情を抑え、痛みを和らげる働きをもたらします。そのため、脳内のセロトニンの濃度が上昇すると脳内が興奮している状態を和らげることができるので、射精のタイミングを遅らせることにも繋がります。
ダポキセチン(Dapoxetine)はプリリジー(Priligy)という医薬品名で、多くの国で早漏を治療するために2009年より発売されるようになりました。ダポキセチンは通常の抗うつ剤よりも速く体内に吸収され働くSSRI薬であり、また素早く体外に代謝され排出されることから、抗うつ剤に特有の副作用や禁断症状を最小限に抑えて早漏を治療することができるようになっています。
ダポキセチンが含まれる早漏防止薬は射精のタイミングを3倍から4倍まで遅らせる効果をおよそ70%の男性にもたらしています。
ダポキセチンの副作用には、吐き気、下痢、めまい、頭痛などがあります。
服用に際しては医師の指示に従い、用法や用量を守って服用すると重い副作用がでることはまれと報告されています。
3)局所薬を使用する
いくつかの局所麻酔薬は、セックスの前に陰茎に適用することができ、コンドームの有無にかかわらずこれらの局所麻酔クリームは性的刺激を減少させることで射精のタイミングを遅らせることができます。
例えば、射精前の時間を改善することができる局所麻酔薬であるリドカインまたはプリロカインなどがあります。
しかし、局所麻酔薬の長期使用は、陰茎の麻痺や勃起の喪失を招く可能性があります。クリームによって作られた感覚の減少は、男性には効果をもたらさない可能性があり、女性に影響する可能性があります。
4)早漏改善のために自己トレーニングを行う
早漏の症状を改善させる2つのトレーニング方法は次のとおりです。
スタート・ストップ法(セマンズ法)
スタート・ストップ法は射精へのコントロール能力を改善することを目的としたトレーニング方法です。男性または女性のパートナーは、男性が射精しようと感じた時点で性的刺激を止め、オーガスムの感覚が沈静化してから、また性的刺激を再開します。
スクイーズ法
スクイーズ法は一人で行うこともパートナーとの性交をともなって行うこともできます。
陰茎に性的刺激を与え、射精しそうになった時に穏やかに陰茎の端を手で絞るように抑え、30秒間抑え続けます。興奮がおさまるとまた刺激を再開します。この繰り返しを数回から10回ほど繰り返します。
このトレーニングを繰り返すうちに徐々に射精までの時間が長くなっていくとされています。
PC筋を鍛える方法(ケーゲル練習)
研究者たちは、PC筋(骨盤底筋)を強化することを目的とするケーゲル練習が、生涯にわたって早漏を有する男性を助けることができることを見出しました。
生来型早漏を患う40人の男性が、ケーゲル練習と会陰床の電気刺激により治療を行なったところ、12週間の治療後、参加者の80%以上が射精反射をある程度制御することができるようになりました。彼らは挿入と射精の間の時間を少なくとも60秒延長することができました。
これらの自己トレーニングは症状が改善するまで持続することが重要であり、トレーニングを行なっても問題が続く場合は医師に相談する必要があります。
5)自律神経を整える健康な日常生活を行う
早漏を患っている男性の多くが、睡眠不足であったり日常的なストレスを抱えていると言われています。
自律神経のバランスを整えるためにも日頃からリラックスすることができるような生活習慣を作りましょう。
セロトニンのレベルを自然にアップさせるためには、日光に浴びること、トリプトファンが多く含まれる食べ物を摂取すること、睡眠を決められた時間に十分にとること、有酸素運動を適度にすること、水分をたっぷりととること、飲酒や喫煙は控えることなどができます。
セロトニンはトリプトファンという私たちが毎日よく食べている食べ物にも多く含まれている成分です。トリプトファンが多く含まれている食べ物は、豆腐や納豆、味噌、醤油などの大豆製品、チーズやヨーグルトなどの乳製品、白米、そばなどの炭水化物などになります。バナナには特に多く含まれています。